探究心と責任感を大切に。生涯ものづくりに取り組み続ける / petalwork
岩槻区で木工の家具・小物作り、店舗設計を行う『petalwork』
川と田んぼに挟まれた工場が立ち並ぶエリアに、二階建ての工房兼住居がある。
「元々働いていた木工所の造りに憧れて、今の物件に決めたんです」と話すのは、代表の堤壮太郎(つつみそうたろう)さん。
父親がDIY好きで幼少期からものづくりが身近な環境で育ち、自らの手でさまざまなモノを手作りしてきた。
高校を卒業後、都内にある美術造形の専門学校に進学したがインテリアについて学びたいと思い一年で退学し、都内にあるインテリアデザインの専門学校に再入学。
通う中で「自分の手でモノを作りたい」という想いが強くなり、在学中に川口市にある木工所でアルバイトを開始した。
2003年に専門学校を卒業し、そのままアルバイトでお世話になった木工所に就職し「仕事終わりに心置きなく個人の作業をさせてくれたんです」と話す寛容な環境で約5年間腕を磨いた。
2008年に独立後も、しばらくは木工所の一角を借りて仕事を請け負っていたが2013年に現在の工房兼住居を購入。
工房横の階段を上がると扉が二つ。どうやら二世帯住宅となっているようだ。
「片方を住宅として使用しながら、もう片方を住宅兼ショールームに改装中なんです。
普段仕事で使用したり、興味がある素材を積極的に家具や内装に使用しているんですよ。
実際に使用して自分が感じたことを、お客さんにお話できるというのはすごく重要だと思っていまして。
自宅でありながら僕のやりたいデザインや使用したい素材を試す、いわば家族を巻き込んだ試験場だとも思っています。」
そのとめどない探究心は、日々の取り組みにも現れている。
「さまざまな素材を日々実験的に組み合わせています。素材の特性を考えると場合によっては、木より他の素材を使用した方が良いこともあるんです。お客さんの要望に対してより良い提案ができないか考えていますね」
工房の近くには鉄工所や板金工場が。その恵まれた環境を最大限に活かしている。
その柔軟さに驚かされるが、「この素材で作らせてください」と自分の意見を優先して伝えることもあったそうだ。
「この仕事を始めた当初は『無垢の木を使う事がベストなんだ!』とこだわりが強い時期もありました。ですが様々なデザイナーの方や職人の方と一緒にお仕事をさせてもらう事で視野が広がり、お客さんにとって何がベストな「ものづくり」なのかを考える為の引き出しが徐々に増えてきました」
お客さんのことを考えるからこそ、出来ないことを出来ないとはっきりと言うこともある。
「素材は変化するので、時間が経った後の状態を考えて提案をすることも多いです。作ったものに責任が取れるかどうかはすごく大切にしていますね」
その仕事に対する真摯な姿勢が、自宅兼ショールームにもつながっているのだ。
工房を構えて11年目。
徐々に受託の仕事に加えて、内装を含めた店舗設計など全体のプロデュースをするような仕事を受けることも増えてきたという。
「部分的にではなく全体に関われることで、お客さんの要望に沿い細部までこだわって作り込めるので、すごく楽しいしやりがいを感じます。何かあったときにメンテナンスもしやすいですしね。店舗設計をした飲食店にプライベートで行った時、『ここに棚があった方がいいじゃないですか』って提案したり(笑)ただ、全体のプロデュースを請け負う時は程度の時間を割かないといけないので、キャパシティの面で難しさを感じますが」
現在は主に、大志郎さんと奥さんの奈央子(なおこ)さんの3人で工房を切り盛りしている。
大志郎さんは長野県にある木工に特化した職業訓練校を卒業後、岐阜の家具製作所に就職。
壮太郎さんが工房を構えて一年目の忙しい時期に、手伝ってもらったことをきっかけに一緒に働き始めた。
奈央子さんは壮太郎さんと同じインテリアデザインの学校に通い、卒業後にインテリアショップに就職。
その後、花屋に転職し現在はお互いの得意を活かして一緒に商品を作るようになった。
人を雇用して仕事量を増やす選択肢は今のところないという。
「人が増えるほどに、マネジメントに時間を割く必要が生まれるなと思っていて。僕は一生ものづくりをしていたいんですよね」
自分の手で何かを作りたいという想いは、幼少期からずっと変わっていない。
自宅兼ショールームが完成した後に取り組みたいことがあるそうだ。
「今の自宅部分を店舗兼ギャラリーに改装したいんです。仕事の合間に作ってる小物を販売したり、試作品を展示したいなと思っていて」
物件を探していた時は二世帯住宅を希望していた訳ではないが、意外な形でその強みが活かされることに。
「でもまずは今の改装を終わらせないとですね。一体いつになるのかと家族からは大ブーイングなんです」と笑う壮太郎さんの顔は、日々の実験を楽しむ少年のようだった。
- 工房名:petalwork(ペタルワーク)
- 所在地:埼玉県さいたま市岩槻区掛553ー6
- お問い合わせ先:090ー4355ー7387 もしくは mail@petalwork.net
- 営業日:月〜金 8:30〜18:00
- 定休日:不定休
- SNS:https://www.petalwork.info/about
- SNS:@petalwork_kinokomono
〈インタビュアー・文・撮影:菊村夏水 〉
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