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自然と地域の「循環」を大切に。ヒンメリを通して地域や人とつながり、豊かに暮らす / 金刺 夢子

大宮
自然と地域の「循環」を大切に。ヒンメリを通して地域や人とつながり、豊かに暮らす / 金刺 夢子

ヒンメリワークショップの開催や、
動画付きヒンメリキットやヒンメリ用ライ麦の販売を行う金刺夢子さん。

3年前に次の仕事が決まっていないタイミングで公務員を辞職。
「自分がやりたいことをやる」と決め畑を借り、家庭菜園を始めた。

自宅で始めたヒンメリワークショップは今や各地のイベントでも開催するように。
昨年度には畑でヒンメリの原料となるライ麦の種まきから収穫まで、
畑の活動を共に楽しむ「おてんば麦育て倶楽部」という取り組みを実施。

ヒンメリを軸に年々活動の幅を広げる金刺さんに、
現在の活動を始めた経緯や現在日本で人気が高まっているヒンメリの魅力を伺った。


日本でヒンメリの人気が高まっている意外な理由とは

――まずは現在の主な活動について教えてください。

金刺さん :「おてんばGarden House」(自宅)や各地のイベントでヒンメリワークショップの開催、動画付きヒンメリキットやヒンメリ用ライ麦の販売をしています。

――畑もお持ちとお伺いしました。

金刺さん : はい、「おてんば農園」という農薬・化学肥料の使用しない自然農法の小さな畑で野菜と共にヒンメリの材料となるライ麦を育てる活動も行っています。

――ご自身で材料となるライ麦も育てているのですね。ヒンメリとはどういったものでしょうか。

金刺さん : ヒンメリは藁(わら)に糸を通して多面体を構成し、それらを繋ぎ合わせて吊るす、別名「光のモビール(※1)」とも呼ばれている北欧フィンランドの伝統的な装飾品です。

(※1)紙やプラスチック、金属板、薄い木の板のような軽い素材を、糸や棒で吊るし、特定の位置でバランスを取って安定するようにしたものである。

(写真提供者 : 金刺 夢子)

――幾何学模様が美しいですね!洗練されていながら、どこか親近感も湧いてきます。

金刺さん : 日本はしめ縄飾りなど稲藁に昔から馴染みがあるからか、国内での人気も高まっているんですよ。

――親近感が湧いたのは、日本人に親しみのある藁を使用しているからだったのですね。
金刺さんが初めてヒンメリに出会ったのは、いつ頃だったのでしょうか?


金刺さん : 元々公務員として働いていたのですが、もっと自由に生きたいと思うようになり3年前に退職しまして。
とりあえず好きなことを思いっきりやってみようと、畑を借りて自然農法で家庭菜園を始めました。

その頃市民講座でヒンメリ作りを体験して、捨てるはずの藁がこんなにも綺麗なものになるのかと驚いたんですよね。

ヒンメリを通して自然の循環・恵みを肌で感じる

――たしかに、本来であれば藁は捨ててしまうものですよね。

金刺さん : はい。
自然の循環・恵みを肌で感じることができるのも、ヒンメリの魅力だと感じておりまして。

畑でライ麦を育てていれば新たに材料を購入する必要はありませんし、
採取した種を翌年播いて育てれば材料となるライ麦が出来ます。
飾っておくとわずかな気流でくるくるとまわり、風の流れを感じることができますし、眺めているだけで心が落ち着くんです。

――ライ麦を育てていれば、自然の循環の中で材料を用意できるのですね。

金刺さん : そうなんですよ。
私の場合は講座を受けたタイミングで、ちょうど冬越しするえんどう豆の風除けにライ麦を畑に植えていたんです。それから個人でどんどんヒンメリを作るようになりました。


――ご自身でワークショップを開催するきっかけは何だったのでしょうか?

金刺さん : 最初は市民講座で教えてくださった都内在住の先生に教え方のレクチャーをしてもらいたいとご連絡したんです。そしたら「私は遠方まで教えに行くのが大変なんです。きっとできると思うからあなた自身で教えてはどうでしょう」とおっしゃられて。

私は自宅でときどき、ボランティアでリース作りのワークショップを開催していたので、ヒンメリワークショップもやってみよう!と思い開催しました。

現在の活動の礎になったボランティア

――元々、リース作りのワークショップも行われていたのですね。

金刺さん : 5年前に上尾市のこの家に引っ越してきてから自宅を開いて「こども食堂わんぱーく」という、ボランティア活動をしていました。

その中で食事の提供だけでなく、交流の場になるようにお母さんたちや地域の方々に得意なものを持ち寄ってもらって、石鹸や味噌作りなどのワークショップを開いてもらっていたんです。

わたしも庭にあるミモザなどの花木を活用して、お母さんや子どもたち向けのリース作りのワークショップを開催していたんですよね。

――ワークショップはお好きだったんですか?

金刺さん : ワークショップを通じてみんなで一緒に手を動かしながら、時折おしゃべりをする場が好きで。
多くの人が生活や仕事に追われて、慌ただしい日々を送っているかと思います。

ですがワークショップの時間は手仕事に集中できてすごく癒されるし、作品ができて持ち帰れるのも嬉しい。
多くの人にとって、そういう時間を過ごすことが大切だと感じています。

ヒンメリワークショップはボランティアではなく有償で始めたのですが、最初の頃は、子ども食堂や畑の活動でつながった方々が何人も参加してくださいました。


――ヒンメリのワークショップは初めから有償で行われたのですね。

金刺さん : そうなんです。
前の仕事を辞めた時点で、自分の好きなことを仕事にしたいという想いがあって。

何か畑や庭でできるものを循環させたいと思っていたので、ヒンメリに出会ったとき「これだ!」と思いました。

代金をいただくにはそれに見合った価値を提供する必要があるので、クオリティをあげるための工夫につながっています。
大切な時間を使ってきていただくので、満足していただけるものにしたいと思っています。

――たしかに、みなさんお金をやりくりしながら生活している分、何にお金を使うか真剣に考えますよね。

金刺さん : だからこそ、代金を支払ってワークショップにきてくださることに本当に感謝しています。
そして活動を継続していると、ありがたいことに徐々に口コミやインスタグラム経由でお客様が増えてきたんです。

身近な循環の中で豊かに暮らす

――通常のワークショップはゆっくりと時間をかけてヒンメリを制作しますが、イベント出店時のワークショップは短時間でヒンメリを制作することが出来ますよね。

金刺さん : そうですね。
夏場の屋外イベント(OMIYA DAIMON MARKET)に出店が決まった際、ゆったり時間を取ってヒンメリを制作するのは難しいなと感じて15分程度で出来る「mini himmeli workshop」を作りました。

――夏場の屋外では集中力がなかなか続かなさそうですよね…。
ヒンメリ作りを気軽に体感するという意味でも良さそうですね。


金刺さん : お子さんも気軽に作れるので、親子で一緒に楽しんでいる様子もみられて嬉しかったです。

「OMIYA DAIMON MARKET」でのワークショップの様子


――新たな取り組みでいうと、昨年は「おてんば麦育て倶楽部」を始められましたよね。どういった倶楽部なのでしょうか?

金刺さん : ヒンメリワークショップに参加してくださっている方と、ライ麦の種まきから収穫までの畑の活動を共に楽しむ倶楽部です。
種をまく、花を摘む、畑でご飯を食べる…一個一個にすごく感動してくださって。
その姿を見て私の楽しさや美味しさも倍増して、シェア出来ることの喜びを感じましたね。

――それは参加者にとっても金刺さんにとっても貴重な体験でしたね。

金刺さん : そうですね。
ヒンメリが自然の循環の中で作られることを、実感してもらえたのも嬉しかったです。

――ヒンメリの活動において大切にされていることはありますか?

金刺さん : 顔の見える関係、地域内の循環を大切にしています。
例えば、ヒンメリワークショップでお出しするお茶菓子は、なるべくマルシェなどで出会った方や、ご近所のお菓子屋さんで購入するようにしていますね。

わたし自身がここ数年、遠くに行かなくても身近に素晴らしい場所、素敵な方々がいっぱいいることを実感していて、その循環の中で豊かに暮らしたいと考えています。

――「循環」が金刺さんの中で大切なキーワードの一つなのですね。
今後取り組んでいきたいことはありますか?


金刺さん : 出張ワークショップやイベント参加など、ヒンメリはわたしをいろんなところに連れて行ってくれて、素敵な出会いをもたらしてくれます。

今後について特に大きなビジョンはないですが、これからもいただくご縁を大切にしながら、一つ一つのワークショップやイベントの機会を楽しんでいきたいですね。

実は今夏にフィンランドのヒンメリ作家さんの農園を2泊3日で訪ねる予定があるんです。それが今はとっても楽しみで。
フィンランドの風土、文化、ヒンメリの起源や意味について、理解を深めたいと思っています。

――それは楽しみですね!自身の気持ちに従い行動されていて、どんどんと活動が広がっていかれているのだなと感じました。素晴らしいです。本日はありがとうございました。

金刺 夢子
  • ワークショップ開催場所名:おてんば Garden House
  • 所在地:埼玉県上尾市井戸木
  • お問い合わせ先:HPに記載のEメール、公式LINE、インスタグラムのDMより
  • SNS:@yumeko.natural
  • HP:https://otenba.amebaownd.com

〈インタビュアー・文・撮影:菊村夏水

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